ある視点:映画/ パターソン

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自浄する孤独

ナイーブゆえに心の内を人に見せない…主演のアダム・ドライバーはそんな役を演じる事が多いように思う。憮然とした表情がよく似合う。

今作ではニュージャージー州パターソンで妻と愛犬と共に暮らすバス運転手「パターソン」を演じている。出勤途中に詩を考え、出発前の運転席で秘密のノートに書き留める。妻を愛し、妻に愛され、仕事帰りに行きつけのBARでビールを飲む。その繰り返しがパターソンの日常。

詩人として大成したいわけではなく、日々の機微を記す為にペンを取る。

主人公パターソンをはじめ、この映画では多くの孤独な人物たちが、愛情ある視点から描かれている。ひとりチェスに興じるBARのマスター、失恋で自暴自棄になる男。

孤独は惨めだったり寂しいだけのものではなく、誰もが抱えるものだ。孤独と向きあい、正しい尺度で世界を見れば、あるがままの自分がある。悲観する事は何も無い。

映画の前半、BARのマスターがひとりチェスを終わらせる。

マスター「…今日は負けだ。」

パターソン「相手は?」

マスター「…俺さ。」

恋、ギャンブル、仕事…何だって勝つ時もあれば負ける時もある。でも負けた相手は誰かじゃなくて、自分自身。シビアだけど愛情に溢れた孤独の美学がこの映画にはある。

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